大分県日田市のやさしい学習塾『いる・かんぴえっろ』

     大分県日田市のやさしい学習塾【イル・カンピエッロ】

電話予約
友だち追加
クラス案内
アクセス
ブログ

第5回④/“戻る勇気”は、成功の記憶から育っていく

前回の第3パートでは、
“安心して戻れる環境”があることが、
子どもたちの学びを支えるというお話をしました。

「怒られない」「バカにされない」「もう一度やってみていい」
――その空気があるだけで、子どもの心はほどけていく。

では、そこからもう一歩。
どうすれば、子どもは自分から“戻る勇気”を出せるようになるのでしょうか?


多くの子どもたちは、
「もう一度やってみなさい」と言われても、
心の奥ではこう感じています。

「また失敗したらどうしよう。」
「もう一度できなかったら、今度こそ自分を責めてしまうかも。」

“戻る勇気”を出せない理由は、
過去の失敗の痛みがまだ癒えていないからです。


勇気は、叱咤ではなく記憶から育ちます。
それも、うまくいった記憶――
「できた」「分かった」「褒められた」という、
小さな成功の積み重ねが、次の挑戦の土台になります。

つまり、“戻る勇気”は、
「できた日の記憶」をもう一度思い出す力でもあるのです。


たとえば、ある中学生の男の子が、
英語の並べ替え問題をどうしても苦手としていました。

「もうやりたくない」と机に伏せた彼に、私はこう言いました。

「先週、英文和訳は自分でできてたでしょ。
あのとき、すごく嬉しそうだったじゃない。
今日の問題も、あの“できた感じ”をもう一度思い出してみよう。」

彼は黙ってうなずき、
ゆっくりとノートを開きました。
そして数分後、照れたように笑って言いました。

「できた。…先週と同じ気持ちになった。」

その笑顔は、“戻る勇気”が生まれた瞬間でした。


自信は、“完璧な成功”からではなく、
「もう一度できた」という実感から作られます。
大切なのは、ミスをしないことではなく、
ミスを乗り越えたあとに、もう一度“できた”を積み上げること。

この繰り返しが、心に“回復の記憶”を残します。


子どもが失敗から立ち上がるとき、
その手を引くのは、叱咤でも努力でもなく、
「できた日の自分を信じる力」です。

私たち大人にできるのは、
その“できた日の光”を一緒に思い出させてあげること。

「あのとき、よく頑張ったね。」
「ここまでできるようになったじゃない。」

それだけで、子どもの中の“再挑戦の回路”が動き出します。


私は塾で、こう話します。

「勇気は、“次もできる”と思う心じゃなくて、
“もう一度やってみよう”と思える心のことだよ。」

勇気は未来の結果ではなく、
いま手を伸ばす決意のこと。

だからこそ、
「もう一度やってみよう」という言葉が、
心の奥に小さく灯ったとき――
それを消さないように、そっと支えてあげてほしいのです。


“戻る勇気”は、自信の再構築です。
一度壊れた自信を修理するのではなく、
“積み直す”という形で新しく育てていく。
それは、「またできた」という体験を積むことに他なりません。

そして、それを支えるのが、
家庭や塾という“安心して戻れる環境”です。
子どもが一歩戻っても、その背中を押してくれる人がいる。
その存在こそが、勇気の根っこになるのです。


学びにおいて最も美しい瞬間とは、
子どもが「もう一度やってみる」と口にする瞬間です。
それは、自信を取り戻したということではなく、
自信を“作り直す”覚悟を持った証拠だからです。


次回・第5回第5パートでは、
このシリーズの締めくくりとして――
「“苦手”を越えて、“学びを生きる力”に変える」
という最終メッセージをお届けします。

コメント

この記事へのコメントはありません。

関連記事

PAGE TOP