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第3回④/“切り替える”のではなく、“重ねる”

前回は、「部活で鍛えた集中力を“勉強の筋肉”へ」
という話をしました。
努力の本質はどの分野でも同じで、
部活で培った集中力や継続力は、
勉強にそのまま転用できる――。

では次に考えたいのは、
その「転用」を、日常の中でどう実現するかということです。


多くの中学生が、「部活が終わったら勉強モードに切り替えよう」と言います。
けれど、実際に“切り替え”は簡単ではありません。
部活が終わると、体は疲れ、心も一度緩みます。
そこから一気に“勉強モード”に変えるのは、
車で言えばブレーキを踏みながら急発進するようなものです。
勢いは出ても、長くは続きません。

そこで私は、こう伝えています。

「切り替える」のではなく、「重ねて」いこう。

勉強と部活を別々のモードに分けるのではなく、
一日の中で“少しずつ重なり合う時間”を作る。
これが、リズムを止めずに続ける最も現実的な方法です。


たとえば、部活のある日。
帰宅してすぐに勉強するのは難しくても、
お風呂のあとに10分だけ復習する。
寝る前にノートを一度開いて「昨日の続き」を見直す。
それだけでも、勉強の呼吸は続いています。

この「重ね方」がうまくなる子ほど、
時間を奪われない。
そして、心も乱れにくい。

勉強を“別の生活”にせず、
“生活の中に置く”――。
それが、「重ねる」という発想です。


この考え方は、
勉強だけでなく人生そのものにも通じています。

人は、すべてをリセットして“新しい自分”になろうとするより、
今の自分の中に“新しい流れ”を重ねていく方がうまくいく。
新学期、新年度、新生活――。
どれも“切り替え”ではなく、“重ね”の積み重ねでしか続かないのです。

勉強も同じ。
昨日までの自分を捨てて一から始めるのではなく、
昨日の自分に、今日の5分を重ねていく。
その小さな重なりが、やがて強い流れをつくります。


ある女子生徒の話です。
吹奏楽部で毎日夕方まで練習をしていました。
部活が終わるのはいつも19時。
塾に通う時間もほとんどなく、
「自分には無理かもしれない」と言っていた子です。

けれど彼女は、毎晩寝る前に“英単語帳を3ページだけ読む”ことを始めました。
それが1か月、3か月と続くうちに、
自然と“机に向かう呼吸”ができていきました。
そして部活を引退したあと――勉強への切り替えが、驚くほどスムーズだったのです。

「部活を引退してから、家で英単語を読んでいた時間が、
今思えば自分をつなぐ練習だったんですね」と、
笑って話してくれました。

そう、“切り替えないための練習”こそ、重ねるということなのです。


もう一つ、大切なことがあります。
「重ねる」ことには、心を安定させる力があります。

たとえば、学校で嫌なことがあった日でも、
いつも通りノートを開いて、昨日の続きを書く。
それだけで、少しだけ心が落ち着く。
それは“勉強している”というより、
自分の生活リズムを取り戻している行為なのです。

リズムは心を守ります。
そして、そのリズムを崩さないように支える場所こそ、
塾なのです。
塾とは、“切り替えの場所”ではなく、“重ねる仕組み”。
止めないための伴走であり、流れをつなぐ橋でもあります。


忙しい毎日の中で、すべてを完璧にこなすことはできません。
でも、「続けるための最小単位」を見つけることはできる。
1日5分でも、昨日のノートを開く。
それを「切り替え」ではなく「重ね」と呼ぶとき、
学びはあなたの生活の中に根を下ろします。

勉強は、部活を引退したあとに“始めるもの”ではなく、
部活をしている今から“並走するもの”。
生活に寄り添う学びこそが、長く続く勉強のかたちなのです。


次回・第3回 第5パートでは、
この第3回全体の締めくくりとして、
「学びのリズムは“今”の中に作る」というテーマでお話しします。
時間を“使う”のではなく、“整える”。
その哲学をもう一歩深く掘り下げ、
第3回の総まとめへと向かいます。

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