共通テスト地理で差がつくのは「抽象的な思考力」ではなく「資料処理能力」だ
──令和8年共通テストを解いて見えた、つまずく受験生の共通点と2027年以降の勉強法
今年の共通テスト「地理総合・地理探究」を、実際に解いてみて、あらためて確信したことがあります。
全体の難度は「やや易化〜昨年並み」。
ただしそれは、単純に「地理の知識が増えた・減った」という意味ではありません。
今回、点差がついたのは別のところです。
資料を丁寧に読み切れるか。
複数の資料を照合し、根拠を見失わずに判断できるか。
ここで手が止まった受験生が、いくつかの設問で悩み、時間を奪われ、失点した。
そんな印象を強く受けました。
この記事で一貫して伝えたいことは、次の一点です。
共通テスト地理は「漠然とした思考力の勝負」ではありません。
基礎知識を前提に、資料を正確に読み、照合し、判断できるか。
この訓練可能な実務的処理能力で、ほぼ得点差が決まります。
言い換えれば、才能や閃きではなく、
「正しい型」を身につけ、反復練習すれば誰でも到達できる力だということです。
「思考力」という言葉について
共通テストでよく言われる「思考力」という言葉は、誤解を招きやすいと感じています。
ここで差がつくのは、
初見の問題に対して、ゼロから答えを導き出す「ひらめき」
抽象的な概念を操作する「地頭の良さ」
ではなく、
複数の資料から必要な情報を取り出す「情報抽出力」
それらを基礎知識と結びつけて判断する「照合処理能力」
です。
これらは、正しい訓練を積めば誰でも習得できるスキルです。
むしろ「型」と「反復」で確実に身につく、極めて実務的な能力だと言えます。
本記事の立場について(あらかじめ)
なお、以下の分析は、私自身が実際に問題を解いた立場からのものです。
専門家としての講義ではなく、あくまで「一受験者視点」での整理になります。
実際の得点は85点で、医学部医学科や旧帝大を狙う水準ではありませんが、
一般的な国公立・私立大学を志望する受験生であれば、まずまずの得点帯だと思います。
(間違えたのは、問題番号14、16、17、26です)
ただし、私は受験生と同じ会場で、一発勝負の緊張感の中で解いたわけではありません。
好きなコーヒーを飲みながら、心理的に余裕のある環境で解いています。
その分、受験生より恵まれた条件で解いていることは、あらかじめお断りしておきます。
また、地理を専門に指導している立場でもありません。
だからこそ、知識が完全に整理されきっていない状態で、
-
どこで判断に迷いやすいか
-
どこで処理が滞るか
を、受験生に近い感覚で捉えられた部分もあると感じています。
その前提のもとで、以下を読み進めていただければ幸いです。
全体傾向
難問は少ないが「読み切れない人が悩む」設問が点在
今回の特徴は、奇問や難問で叩き落とす設計ではありません。
問題そのものは標準的です。
ただし、資料が複数提示され、判断材料が散らされていました。
そのため、
知識はあるのに、どこを見ればいいか分からない。
資料を一つずつ読んでいるうちに、時間だけが溶けていく。
こうした受験生が、同じところでつまずきやすい構成だったと思います。
重要なのは、資料を読むためにも基礎知識が必要だという点です。
知識がなければ、資料のどこを拾えばいいのかが分かりません。
第1問:乾燥・半乾燥地域の生活文化
写真と自然環境の「組み合わせ」で迷わせに来る
第1問は、内容自体は基礎的で、難問らしい難問はありません。
ただし、写真や図と自然環境を対応させる「組み合わせ問題」が多く、
資料を丁寧に読めないと、選択肢を絞り切れず迷いやすかったはずです。
ここで注意したいのは、写真から勝手に意味を膨らませないことです。
共通テストは、与えられた情報を根拠に答えさせる試験です。
対策はシンプルです。
写真や図を見たら、まず「何が写っているか」を言語化する。
そこから、乾燥地域の基本
(降水・日較差・建材・灌漑・オアシス)
に結びつける。
この「言語化 → 接続」の癖を、早めに作ることが重要です。
第2問:津軽平野と周辺の地域調査
標準問題なのに正答率が落ちやすい「共通テスト型」
今回、多くの受験生が悩んだのは第2問だったのではないでしょうか。
問われている内容自体は標準的で、
特定地域のマニアックな知識を求められているわけではありません。
それでも時間がかかり、ミスが出やすかった。
理由は明確で、複数の資料を同時に突き合わせる設問が多かったからです。
地域調査=地域性の暗記、という発想では対応できません。
共通テストの地域調査が問うのは、あくまで「普遍性」です。
河川下流域は低湿地で、水利に恵まれ、稲作が行われやすい。
砂丘は水利に乏しく、畑作や果樹園になりやすい。
災害リスク資料は、土地条件と結びつけて読む。
こうした普遍的な連結ができれば、
資料の読み方に「型」が生まれます。
第3問:世界の自然環境と自然災害
統計地図は「重ねた時に何が言えるか」
分野自体は例年通りで、基本知識と資料読解で対応できる構成でした。
ただし、自然災害リスクと人口分布など、
複数の統計地図の関係を読ませる設問では、
時間を取られた受験生も多かったはずです。
統計地図は、1枚ずつ丁寧に読むよりも、
重ね合わせた時に何が言えるかが問われます。
なぜ災害リスクの高い地域に人口が集中しているのか。
逆に人口が少ないのは、地形や気候、生業の制約があるからか。
地図から理由へ接続できると、選択肢は自然と消えていきます。
第4問:衣料品の生産・流通・再利用
難問ではなく「情報処理量」で迷わせる設計
第4問は、探究色が強く、
フローチャート・統計・文章を組み合わせた設問が中心でした。
難しいというより、
「全体像が掴めずに迷う」タイプの問題だったと思います。
典型的な失点パターンは、
部分は読めているのに、全体がつながらない状態です。
対策としては、フロー図を次の視点で分解することです。
-
どこで作り、どこで消費し、どこへ流れるのか
-
戻るのは素材か、製品か、それとも資金か
-
統計は量・比率・順位のどれを見せたいのか
この視点で読めれば、十分に対応できます。
第5問:人口と都市
「米国都市圏グラフ判別」が難所
人口・都市は頻出分野で、基本問題は取りやすい構成でした。
一方、今回の難所として挙げられるのが、
米国都市圏のグラフ判別です。
出生率・人口増加・年齢構成など、
複数のグラフを見比べて都市圏を識別させる。
ここは「比較の目」がないと、
選択肢を絞り切れません。
人口ピラミッドは形で覚えるのではなく、
自然増加率・移民流入・都市圏構造とセットで理解することが重要です。
第6問:ドナウ川・ナイル川・メコン川
地誌が減ったと油断したところを突いてくる3河川比較
地誌の出題量は減少傾向と言われますが、
今回は3河川を比較させる形式でした。
基礎地誌が曖昧な受験生には、
負担が大きかったと思います。
ただし、ここにも「型」があります。
河川 → 気候 → 生業 → 人口・都市 → 環境問題
この流れで整理しておくと、比較問題に強くなります。
2027年以降に向けた学習ポイント
知識を「照合できる形」にする
-
資料を2〜3種類またいで照合する練習を、早期から入れる
-
地誌は単独暗記ではなく、関係性をセットで理解する
-
都市・人口分野では、グラフ処理の訓練を重点化する
結論
共通テスト地理は「読解」と「基礎知識」を統合できる人が勝つ
知っていれば、速く正確に処理できる。
知らなければ、資料を見ても拾えない。
拾えないから迷い、時間を浪費し、最後の判断でミスが出る。
最後に:「思考力」という言葉の誤解について
共通テスト地理を「思考力が問われる」と表現されることがあります。
それ自体は間違いではありませんが、誤解を生みやすい表現だと感じています。
ここで求められているのは、
天賦の才や閃きではなく、
**訓練によって誰でも習得可能な「資料処理の型」**です。
基礎知識を覚える → 資料から情報を抽出する → 照合して判断する。
このプロセスを、過去問や問題集で繰り返し練習すれば、
確実に得点は伸びていきます。
だから地理は、運でも才能でもなく、準備の科目です。
日本史や世界史と比べれば、
地理は暗記しなければならない知識量は多くありません。
しかし、それは「何も覚えなくていい」という意味ではありません。
地理においても、基礎知識の記憶は、
資料から必要な情報を抽出し、正しく判断するための土台になります。
2027年に向けては、
知識を増やすだけで満足せず、
その知識を資料照合に使える形へと整理し直す。
この訓練が、最も効くように思います。
コメント